
ねえ、マスター。投資で得られた利益には、確か税金がかかるんだよね?

そうだよ。利益が出た場合、何も知らずにそのままにしておくと、脱税の容疑で逮捕されてしまうかも…

ええっ! 逮捕!?それって大変なことじゃない!

…まぁ、逮捕っていうのは最悪の場合の話だけどね。でも投資を始める前に税金のことも知っておいた方がいいのは事実

税金って難しそうなイメージがあるのよね…

あまり難しく考える必要はないよ。基本的な部分から見ていこう
目次
0. 初心者は「特定口座の源泉徴収あり」
先に結論から言うと、初心者は
- 特定口座の「源泉徴収あり」を選択する。
- 損失がでたら確定申告で損を繰り延べする。
というのが定番。
理由を順に説明します。
1.税金の種類について

投資にかかる税金には、大きく分けて2つの課税方法があるんだ
【投資にかかる税金の課税方法2つ】
- ① 分離課税
- 特定の取引の一部を他の所得と合算せず別に課税する方法で、税率は20.315%(所得税+住民税)。
「申告分離課税」と「源泉分離課税」の2つに分けられる。- 申告分離課税…確定申告必要。1年間の株式等の売却損益を合計し、決められた税率に基づき納税する
- 源泉分離課税…確定申告不要。利益を受け取るごとに一定の税率(現在は20.315%)で差し引かれ、残った分が手元に入る
- ② 総合課税
- 1年間の所得をすべてまとめて一定の税率で課税する方法で、金額に応じて確定申告が必要。
税率は15〜55%(所得税+住民税)で、所得が多いほど高くなる。
課税所得(所得税の対象となる所得)が695万円以下の場合は、総合課税で申告した方がお得になる場合もあります。

難しい言葉が並んでいて、早くも頭が痛いわ…

分かりやすく言うと、サラリーマンの場合、分離課税のところで言う『他の所得』には給与所得なんかが該当するよ。こうした所得と、投資で得た利益や損失を分けて課税するというのが分離課税だね

月々のお給料と投資の儲けは別に考えるってことね。逆に、総合課税だとまとめて考えるってことか…。分離課税でも確定申告が必要なものと、そうでないものがあるのね

そうだね。言葉自体は耳馴れないかもしれないけれど、実は銀行預金の金利なんかは源泉分離課税。あらかじめ税金分が差し引かれて、残った分が振り込まれているんだよ
2.商品と税金の関係について

税金に種類があるのは分かったけれど、これなら『確定申告不要』の『源泉分離課税』を選べば何も気にすることなさそうだけど…

いやいや…これって自由に選べるわけじゃなくて、商品や利益の中身によって決められているんだ

えっ! じゃあ、ひとつひとつ覚えなきゃいけないの?そんなの無理だわ…

覚える必要はないけれど、なんとなく違いがあることを知っておく…という感じかな。後で説明するけれど、今は『特定口座』で自動で計算してくれるから
2-1.株式
- 国内上場株式の場合
-
- 売却益(譲渡所得)…申告分離課税
- 配当金(配当所得)…申告分離課税、源泉分離課税、総合課税(配当控除あり)
- 海外上場株式の場合
-
- 売却益(譲渡所得)…申告分離課税
- 配当金(配当所得)…申告分離課税、源泉分離課税、総合課税
※海外上場株式の場合、円換算の際に為替差損益が発生します。
※海外上場株式の場合は外国での課税も発生。売却益については原則発生しませんが、配当金については外国で源泉税を徴収し、残った金額に対して国内で課税されます(外国税控除制度あり)
2-2.投資信託
- 公募株式の場合(国内・外国)
-
- 売却益・解約益・償還差益(譲渡所得)…申告分離課税
- 分配金(配当所得)…申告分離課税、源泉分離課税、総合課税
- 公募公社債の場合(国内・外国)
-
- 売却益・解約益・償還差益(譲渡所得)…申告分離課税
- 分配金(利子所得)…申告分離課税、源泉分離課税
※外国投資信託は原則として国内投資信託と同じですが、外国で課税される額との調整や、国内における税計算上の採用為替の違いに注意が必要です。
2-3.債権
- 国内債券(国債、地方債、公募公社債など)および外国債券
-
- 売却益・償還差益(譲渡所得)…申告分離課税
- 利子(利子所得)…申告分離課税、源泉分離課税
※外国債券の場合は外国課税との調整などがあります。
2-4.FX
- 取引所FX、店頭FX
-
- 決済益(雑所得)…申告分離課税
- スワップ金利(雑所得)…申告分離課税

売却益って、株式や投資信託を売却したときの利益のことだよね?ざっと見た感じ、売却益は基本的に申告分離課税って感じね

売却益以外の利益は課税方法を選べるといった感じかな。外国のものになると、課税額の調整や日本円に換算するときの為替なんかも関係するから、少しややこしく感じるかもしれないね

通貨が違うと大変なのね…。ちなみに、売却益が出たら毎回自分で確定申告しなきゃいけないの?ちょっと面倒かも…

毎回確定申告が必要なわけではないよ。次の2つの条件をともに満たしていれば、確定申告は不要…つまり、課税されないんだ
【確定申告が不要となる条件】
- 年収が2,000万円以下
- 株や投資信託の利益が20万円以下

この条件を満たしていない場合は、特定口座を利用すると確定申告が楽になるよ
3.特定口座とは

特定口座は、株式・投資信託・債権で利用できる口座。FXは利用できないから注意してね

一般口座と何が違うの?

一般口座では、確定申告に必要な取得価額の管理や損益計算なんかを自分自身でやらなきゃいけない。特定口座だと、こうしたことを証券会社が代理でやってくれるんだ

投資の中でも大変な部分を、証券会社が代わりにやってくれるってことね

そう。そして特定口座は、源泉徴収あり口座か源泉徴収なし口座のどちらかを選べるんだ
【特定口座について】
特定口座で取引した分については、確定申告に必要な情報(取得価額、損益計算など)を証券会社が代理でまとめてくれます。
- 源泉徴収あり口座
- 原則として確定申告不要だが、売却するたびに20.315%の税金が天引きされる。
損失を繰り越す場合は確定申告が必要となる。 - 源泉徴収なし口座
- 確定申告が必要。証券会社から「年間取引報告書」が送られてくるので、それを利用して確定申告を行う。

源泉徴収あり口座だと、確定申告をする必要がないんだ。その代わり、売却するたびに税金が天引きされる

年収2,000万円以下で、なおかつ利益が20万円以下なら税金を払わなくていいけれど、源泉徴収あり口座にすると自動的に課税されてしまうってわけね…

そういうこと。もったいないと感じるかもしれないけれど、専業主婦やパート勤務などで『配偶者控除(配偶者特別控除)』を受けている人にはメリットもある
【配偶者控除と投資の利益について】
通常、投資で得た利益は所得とみなされるため、利益が大きくなると「配偶者控除」や「配偶者特別控除」から外されてしまう可能性が出てきます。
ただし、源泉徴収ありの特定口座を利用した取引の場合は、いくら利益が大きくなっても控除対象の判定に影響がありません。
こうした控除の対象者で大きな利益を目指している場合は「源泉徴収あり口座」がオススメ。
なお、「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」は必要に応じて選択可能です。
4.税金が優遇される制度も活用しよう

投資にかかる税金の話をしてきたけれど、最近はNISAやiDeCoなど税金が優遇される制度も増えているんだ

どちらも、投資にかかる税金が非課税になるんだよね
【非課税投資に関する制度について】
- NISA
- 年間120万円までの投資額が、最長5年間非課税になる。2018年からは「つみたてNISA」もスタート。NISAについて詳しくはこちら
⇒NISAのメリットと注意点 - 個人型確定拠出年金(iDeCo)
- 老後に備えるためのもので、毎月一定額を積み立てるもの。積立額の上限は年金の被保険者区分によって異なる。
掛金は全額が所得控除の対象となり、運用中の利益も全額非課税。
ただし、60歳を過ぎないと引き出せない。
個人型確定拠出年金について詳しくはこちら
⇒個人型確定拠出年金(iDeCo)とは
【主なネット証券のNISA】
※表はスクロールします→
SBI証券 | 楽天証券 | マネックス証券 | カブドットコム証券 | 松井証券 | GMOクリック証券 | ライブスター証券 | 岩井コスモ証券 | |
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特徴 | NISAでもやはり業界最強の一角。 | 海外ETFなら実質手数料無料に。 | 豊富な海外投資商品もNISA運用可能。 | プチ株の積立もNISAに対応。手数料無料は買付時のみ。 | 投資信託は全てノーロード! | 投資信託は全てノーロード! | 買付は指値注文のみ。通常取引と同じ手数料が発生。 | ネット取引の場合、NISAで海外株式を運用できない。手数料も発生。 |
国内 | ||||||||
株式現物 | ◯ (手数料無料) | 〇 (手数料無料) | 〇 (手数料無料) | 〇 (買付時手数料無料) | 〇 (手数料無料) | 〇 (手数料無料) | 〇 | 〇 |
IPO銘柄 | ◯ | × | 〇 | 〇 | × | × | × | × |
ETF(ETN) | ◯ (手数料無料) | 〇 (手数料無料) | 〇 (手数料無料) | 〇 (買付時手数料無料) | 〇 (手数料無料) | 〇 (手数料無料) | 〇 | 〇 |
REIT | ◯ (手数料無料) | 〇 (手数料無料) | 〇 (手数料無料) | 〇 (買付時手数料無料) | 〇 (手数料無料) | 〇 (手数料無料) | 〇 | 〇 |
投資信託 | 2,420本以上 (1,120本以上) | 2,463本 (1,170本) | 1,062本 (623本) | 1,019本 (593本) | 191本 (191本) | 62本 (62本) | 1本 (1本) | 〇 |
海外 | ||||||||
株式現物 | 米国、香港、韓国等9カ国 | 米国、中国、アセアン | 米国、中国 (手数料キャッシュバック) | × | × | × | × | × |
ETF | 米国、中国、韓国 (手数料無料) | 米国、中国、シンガポール (手数料キャッシュバック) | 米国、中国 (手数料キャッシュバック) | × | × | × | × | × |
詳細 | SBI証券 | 楽天証券 | マネックス証券 | カブドットコム証券 | 松井証券 | GMOクリック証券 | ライブスター証券 | 岩井コスモ証券 |

税金に関して言えるのは、納税する分は確実なマイナスだということ。マイナスの要素を出来る限り取り除くことが、投資をするうえでは大事だからね

こうした制度を活用しないともったいないってことね

そう。もちろんメリットだけでなく注意点もある。始めるときはそこもよくチェックすることをオススメするよ
投資にかかる税金のまとめ
- 投資にかかる税金には「分離課税」と「総合課税」がある
- 受け取る利益によって課税方法は異なる
- 年収2,000万円以下で投資による利益が20万円以下なら、確定申告の必要はない
- 株式、投資信託、債券では「特定口座」が利用できる
- 「源泉徴収あり特定口座」なら利益が大きくなっても確定申告の必要ナシ。配偶者控除・配偶者特別控除の判定にも影響しない(ただし、利益が20万円以下でも課税される)
- 「源泉徴収なし特定口座」の場合、20万円を超える利益が出たら確定申告が必要。配偶者控除・配偶者特別控除の判定に影響あり
- NISAやiDeCoなど税金が優遇される制度もあるので、活用する